カテゴリ: 芸術コミュニティの考察

東京のアートシーン:枠が多すぎて窓が足りない

東京のアートシーンって、すごいですよね。ギャラリーが立ち並び、アートフェアが毎年のように開催されて、世界中からアーティストやコレクターが集まってくる。六本木や銀座を歩けば、洗練された展示空間がそこかしこにあって、まるで芸術が街の一部みたい。でも、私がSEED SHIPを運営しながら感じることって、実はちょっと違うんです。確かに華やかで、確かに才能も集まってる。でも、どこか息苦しい。この街のアートシーンには、枠が多すぎて、窓が足りない気がするんです。

どういうことかっていうと、東京のアートって、商業的な「枠」にハマりすぎてるんじゃないかって思うんです。たとえば、ギャラリーに行くと、作品には必ず値札がついてる。アートフェアに行けば、「これ売れるかな?」って空気が漂ってる。アーティストだって、「市場で評価される作品」を作ることを意識せざるを得ない。去年、友達のアーティストが言ってたんです。「ハルト、俺の絵、もっと売れる色使いに変えようかなって思うんだよね」って。その言葉、なんか寂しかった。だって、彼の絵って、昔はもっと自由で、もっと荒々しくて、見てるだけで心が動くものだったのに。

もちろん、お金が絡むのは仕方ない部分もある。アートだって生活の一部だし、アーティストが食べていくためには売れなきゃいけない。現代アートの市場を見ると、世界中で何十億っていうお金が動いてるわけだし、東京はその中心の一つ。でも、その「売れるための枠」が、アートの本質を閉じ込めてるんじゃないかって思うんです。枠ばっかり増えて、自由に外を眺める窓が減ってる感じ。

それに対して、SEED SHIPって全然違うんですよ。ここは、3階の小さなラウンジで、東京の空を見ながら、みんなが好き勝手に何かを作ったり、話したりする場所。たとえば、この前なんか、ワークショップのつもりが、ただみんなでビールを飲みながら壁に落書きして終わっちゃった日があった。それでも、笑い声が響いて、誰かが「これ、楽しいね」って言ってくれた。あの瞬間、ここには商業的な枠なんて一つもなかった。ただ、作りたいから作る、感じたいから感じる。それだけでいい空間だったんです。

東京のアートシーンを見てると、ときどき「評価されること」が目的になってる気がするんです。アートって、本来はもっと自由でいいはずなのに。たとえば、バンクシーみたいなアーティストを見ると、彼はストリートで勝手に描いて、誰かに売るためじゃなく、ただ伝えたいことを表現してる。オークションで何億もついた作品だって、本人はシュレッダーにかけちゃうくらいだし。そういう自由さって、東京のギャラリーの中じゃなかなか見られない。枠の中でしか動けないから、窓から外を見る余裕がなくなってる。

SEED SHIPをやってて思うのは、アートって「売れるもの」じゃなくて、「生きてるもの」でいいんじゃないかってこと。この前、あるお客さんが、コーヒーを飲みながら紙に詩を書いてたんです。読ませてもらったら、短いけど、なんか胸に刺さる言葉だった。「これ、売るの?」って聞いたら、「いや、ただ書きたかっただけ」って笑ってた。その詩、誰かにとっては価値ゼロかもしれない。でも、その人にとっては、その瞬間の気持ちを形にした大事なものだった。それって、アートとして十分だと思うんです。

東京のアートシーンが商業的すぎるって批判するとき、別に全部がダメって言いたいわけじゃない。才能あるアーティストもいるし、素晴らしい作品もたくさんある。でも、その才能や作品が、枠に押し込められて、窮屈そうに見えることがあるんです。たとえば、アートフェアで見たある絵。色も形もすごい好きだったけど、隣で「これ、いくらで売れるかな」って話してる人がいて、なんか興ざめしちゃった。アートが商品になる瞬間、その自由な魂がちょっと削がれる気がする。

SEED SHIPでは、そんな枠をできるだけなくしたいんです。ここに来る人には、「売れるか」とか「評価されるか」とか考えずに、ただ作りたいものを作ってほしい。たとえば、子供が描いた落書きみたいな絵だって、ここでは立派なアート。誰かが「これ、いいね」って言えば、それで完成。窓から外を見て、風を感じて、自由に息ができる場所でありたいんです。

東京のアートシーンに足りないのは、そういう窓なんじゃないかな。商業的な成功を目指すのもいいけど、もっと枠を外して、自由に飛び跳ねるアートがあってもいい。SEED SHIPみたいな小さな場所が、そんな窓の一つになれたら嬉しいなって思うんです。だって、アートって、枠の中で飾るものじゃなくて、窓から見える空みたいなものだと思うから。

あなたはどう思う?東京のアート、枠にハマりすぎてるかな?それとも、それでいいのかな?SEED SHIPの窓から見える景色を、いつか一緒に眺めてみたいですね。